今回は、ファブリー病患者である夫の初期症状からファブリー病と確定診断を受けるまでの記録です。
前回の記事は、こちらです。
夫が書いてくれたメモを基に、私が聞いた話を加筆・編集しています。
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目次
ライソゾーム病の一種であるファブリー病
ファブリー病とは、細胞の中の小器官(ライソゾーム)の中にある、α-ガラクトシダーゼという酵素の働きが弱い、あるいは酵素そのものがないことによっておこる遺伝性の疾患です。(突然変異の場合もある。)
本来、酵素によって分解されるべき物質(GL-3)がうまく分解されず細胞内(腎臓、心臓、血管の内皮、角膜、汗腺、神経節など)に蓄積し、全身にさまざまな症状が現れます。
夫のファブリー病症例の経過
当事者である本人、そして家族としても辛い一番の症状が、手足の激しい痛みです。
夫の記憶では、10歳頃から四肢疼痛(手足の痛み)が出たとのことで、ファブリー病でよく言われる初期症状です。ファブリー病と診断されるまでに28年間も、この激しい痛みは謎の痛みとして付きまとっていました。
以下が、症状の経過です。
- 10歳頃:風邪などの発熱時に手足の末端が焼けるような強烈な痛み(疼痛)がでるようになる。病院に行くと、膠原病やリウマチなどの疑いで検査するが、特に異常なし。平熱になると痛みがおさまる。
- 中学~高校:マラソン等の運動をした場合でも手足の疼痛を感じるようになる。運動後、30分ほど休憩すると痛みがなくなる。この頃、あまり汗をかけない体質(発汗障害)だと気づく。
- 大学以降:発熱時と運動時に手足の疼痛があったが、できるだけ長時間の運動は避け、発熱時は解熱剤で熱を下げ体調が回復するのを待つ、という対応。20代半ばくらいから、ちょっとした疲れやだるさでも痛み(程度差はあるが我慢できるレベル)を感じようになってきた。痛みを軽減させるにはお酒を飲むのが効果的だった。また、社会人になってから下痢になりやすくなった。
※ファブリー病と関係あるかわからないが、皮膚に関して、以下の症状がある。
- 中学頃~:頭のふけ
- 20代~:体全体の乾燥肌(かゆみあり)
「以降、38歳まで自分がファブリー病とは知らず、日々の生活を送る。
妹は8歳下だが、やはり10歳頃から手足の疼痛があった。のちの検査で罹患者であると確定した。」
以上が、夫に思い起こしてもらった症状の記録です。
補足説明:10歳頃~
この頃から四肢疼痛が始まり、家族もどうしてあげたらいいか悩んでいたそうです。
痛がる孫を見て、夫の祖父は痛みを訴える場所をさすったりしたそうですが、この痛みは触れるだけでかなりの激痛らしく、本人としては余計に痛いので怒っていた、とのエピソードを聞いたことがあります。当事者でない私も、やはりその痛みを経験したことがないので、初めて夫が痛がっている様子を見た時は、さすってあげたい気持ちになりました。しかし、事前に義祖父の話を聞いていたので、やることはありませんでしたが、私が思っている痛みに対する対応では、かえって夫に痛みを与えてしまう・・・傍で見ていて無力感と、早く痛みが引くことを祈ることしかできませんでした。
膠原病やリウマチの検査で異常なしだったので、風邪や発熱時に出る体質と考えられていたようです。
補足説明:高校3年の頃
高3の頃、原因不明の微熱が続き、それに伴い四肢疼痛もあったとのことで、3週間入院していました。
特に治療法もなく、ただただ安静にしていたとのことです。
結局、微熱の原因もわからないまま、症状が回復したことで退院しました。
大学受験もある大事な時期でしたが、担任の先生の理解もあり、無事に進学できたそうです。
補足説明:大学4年の頃
熱が出ると痛みも出現していたので、医師から対処療法として、なるべく風邪を引く原因を取り除くという理由で、扁桃腺切除の手術を勧められたとのこと。そして、全身麻酔の手術を受けることになったとのことでした。
しかし、扁桃腺肥大でもなかったらしいので、全身麻酔をしてまで切除する必要はなかったのではないか・・・と私は考えてしまいます。ファブリー病と診断されない中、考えられる対処療法として仕方なかったでしょうが、やはり早期発見できていれば良かったな、と考えさせられる話でした。
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補足説明:手足の痛みを和らげる為の飲酒
夫に出逢った頃は、既に毎日の晩酌が日常になっていました。
飲酒に関しては、ファブリー病と診断されるまでは強く言うことができず、なかなか休肝日を作らない夫に、内心ハラハラしていました。
なぜなら、夫にとって四肢疼痛に一番効くのがお酒だったからです。
あの尋常じゃない手足の痛がりようを見ているので、「アルコールが入れば痛みがマシになる。」と言われると、飲みなさんな、とは言いづらかったのです。
それでも肝機能のことが心配であることを話せる機会があった時は、お酒の代わりに市販の鎮痛剤を飲むのはどう?と私が提案し、試してくれていることもありました。(のちに鎮痛剤の飲み過ぎは腎機能を低下させる、とファブリー病の担当医から言われた時、勧めたことを後悔しました。)
しかし、そのうち日中に痛みが出てきそうな時には鎮痛剤を飲んで、夜はお酒、というような日が続くようになり、結局肝臓にも腎臓にも良くない生活になっていたのでした。しかも鎮痛剤は、完璧に痛みを取ってくれるものではなく、「ちょっと効いたかな?」程度だったのです。
ファブリー病と診断されてすぐに処方されたお薬が、カルバマゼピン(デグレトール)で、鎮痛剤よりもだいぶ効き目を感じられる薬に出逢えたことに、本当にありがたい薬が見つかった!!と心から感謝しました。
現在は飲酒の量・回数もだいぶ減らして、「痛みを和らげるお酒」から気分転換のお酒になりました。
補足説明:因果関係はわからない皮膚症状
ファブリー病と関係あるかわからないですが、皮膚の症状に関して上記に二つほどあげていました。
そのうち、中学生の頃から出るようになった頭のフケは、脂漏性皮膚炎(湿疹)と診断されています。現在も症状があり、通院しています。
もう一つの体全体の乾燥肌ですが、こちらも皮膚科で診てもらっています。基本的には、保湿剤でのケアですが、かゆみが強い場合はステロイド軟膏を使用しています。脂漏性皮膚炎(湿疹)も基本的に同じ処方です。「乾燥肌でのかゆみ」と文字にする分には、そこまで深刻な印象は受けないかもしれませんが、悪化すると体中に変色した円形・楕円形のものができ、貨幣状湿疹(参考サイトはこちら)という状態に近いです。確か乾癬と診断された時もあったと思いますが、正しい診断名はよくわかりません。
そしてこれは追加情報ですが、34才以降から急に顔にニキビのような炎症がぼこぼこ出始めました。最初はストレスが原因だと思っていました。しかし、その後も繰り返し炎症が出たり、顔はまるで飲酒しているかのように一日中赤ら顔になっていました。ニキビの出やすい10代の頃は悩んだことがなかったと言っていた夫は、私と出逢った頃も、顔のお肌はニキビ跡などなく、ツルンとしていたように記憶しています。しかし、今はだいぶニキビ跡になっています。色々皮膚科は受診してみましたが、これに関しては、酒さと診断した皮膚科もありましたが、正直、本当にそうなのかな?と思ってしまいます。
ファブリー病の症例として、脂漏性皮膚炎(湿疹)、乾燥肌による強いかゆみ、ニキビ、酒さというような内容は、私が調べた中では見たことがないのですが、もしかしたら因果関係があるのかな?と個人的には気になっています。
理由としては、汗をかけないというのが影響しているのでは、と思うのです。
ステロイド軟膏を長年使用しているせいか、ファブリー病で通院している病院で骨密度の検査をした際、股関節の骨密度が低いことがわかりました。これは、将来のことを考えるととても気になる状態です。
まとめ
以上が、夫のファブリー病症状の経過記録です。他にも思い出したことがあれば、追加していこうと思います。
また、これ以外の症状で、診断前にファブリー病ではないか?と気になったのが、健康診断の心電図でよく引っかかるのと、時々タンパク尿がプラスマイナスになることがあるという話でした。蛋白尿については時々なので、一過性のものとして特に気にする必要はないと言われていたようです。
ファブリー病を調べると、早期発見、早期治療がかなり有効らしいのですが、ほとんどの方が遅れての診断になっているのが現状のようです。
もし夫も早めに診断されていたら、必要のない手術を受けることもなかっただろうに。
もし早めに治療できていたら、こんなにも手足の痛みが酷くならずに済んだかもしれない・・・。疲れやすい体質も、改善されていたかもしれない。思うことは色々あります。しかし、治療法のある診断名がついたことは本当に大きな救いでした。
そして、まだ診断されていないファブリー病保因者が、少しでも早く診断され治療開始できるようになってもらえたら、と思うのです。
夫の記録が、同じような痛みや症状で苦しんでいる方に届いて、正しい診断と治療を受けられるきっかけになればと願います。