二人目不妊治療の為、40代で体外受精に挑戦。陽性判定を受けたのも束の間、その後、化学流産となりました。
その内容の記事はこちら。
二人目不妊治療では、AIH(人工授精)と体外受精でそれぞれ化学流産という結果になりました。
体外受精で喜びの陽性判定を受けてからの結果が流産。奈落の底に突き落とされたにもかかわらず、泣き虫の私が涙を流すことはありませんでした。きっと、ショックな感情にふたをしていたのだと思います。
淡々と過ごす毎日・・・だけど心にぽっかり穴があいた空虚感がついてまわり、「このままではいけない。」と感じた私は、通院していた不妊外来で無料で受けられる心理カウンセリングを受けることにしました。
その過程をブログに記録します。
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目次
最初で最後の1度きりと決めていた体外受精。
陽性判定後からの流産確定後、生理2日目に受診しました。陽性判定を受けてから2週間後のことでした。
体外受精は1回だけと決めていたので、AIH希望を先生に伝えました。
診察が終わり、よく声をかけてくれる看護師さんから、いつものように声をかけられました。
と、普段通りのトーンで伝えたのですが、その時に看護師さんから次のメモを渡されました。
妊娠を喜んだ矢先の思いがけない出来事に、戸惑いや悲しみを感じられていることかと思います。突然のことに心が揺れ動かされ、さまざまな感情が沸き起こっていることでしょう。医師から説明を受けても、ショックで頭が真っ白になり、いつものように理解することが難しかったり、ご自身の周りに怒りをぶつけてしまうかもしれません。気持ちの落ち込みがしばらく続く場合もあります。感じ方や表現の仕方、現れる時期はそれぞれ違いますが、これらのことは、このような状況に遭遇した方の多くが感じられる自然なものです。
当クリニックでは、心理カウンセリングを行っています。誰かに話を聴いてほしい、一緒に気持ちの整理をしてほしいと思われるときには、遠慮なく御利用ください。
と、優しく言ってくれました。
しかし、その時はまだ、私はカウンセリングを受けるとは考えていませんでした。
自分で異変を感じたYouTubeの視聴時間
保育園児の子供のお世話、仕事、家事、母の病院付き添い等・・・相変わらず淡々とした毎日を過ごしながらも、心にぽっかり空いている感覚はまだありました。でも毎日どうにか過ごせてはいるのです。
しかし、一つだけ自分でも変だと思い始めたことがありました。
それがYouTubeで見始めたネコ動画の視聴時間です。
もう一瞬でも時間があると思えば、YouTubeでお気に入りのネコ動画を見始めていました。そのうち、どんどんYouTubeさんが色々なネコ動画チャンネルを紹介してくれるので、つきることがありません。笑
しかも犬派だった私が、猫ばかり見るようになっていました。(基本動物好きですが、その中でも犬派だと自分で言ってきていました。)
なんだか、ネコ動画を見ている間だけは、それに集中できて、心のぽっかりを忘れさせてくれました。
それが、食事を作る合間、食後、夫が子供の入浴等の世話をしてくれている間・・・隙あれば動画を見ていたい衝動にかられ、どうにもコントロールできなくなっていました。
子供が起きている間も、ネコ動画のことばかり考えていました。たぶん、その時の私は、子供の目の前にいながらも、子供のことをちゃんと見れていなかったかもしれません。心ここにあらずで、ネコ動画を見ている時だけが、落ち着いた気持ちでいられるような、そんな感覚でした。
平日の仕事がお休みの日も、やるべきこともほったらかしにして、何時間もYouTubeのネコ動画に明け暮れていたのでした。
そんな生活が3週間近く経ったころ、これは病的なんじゃないかと思うようになってきました。
ネコ動画を見るのはいいんだけど、こんなにも依存するかのように見続けて、何だかまだ保育園児の子供のこともちゃんと接していないような気がして、自己嫌悪にもなっていきました。
そこで夫に、体外受精専門のカウンセリングを受けようと思う、と告げました。
夫も私の様子は傍で見てきているので、さすがに見すぎだという認識はあったようです。必要あれば、自分も同席してカウンセリングを受けるよ、とも言ってくれていました。
体外受精専門カウンセラーとの面談
以前、看護師さんからもらったメモを片手に、病院に電話をしてカウンセリングの予約を取りました。
当初は夫も同席してもらうつもりでしたが、夫の仕事のスケジュール調整等を考えると少し先になってしまいそうだったので、とりあえず一人で行って話してみて必要あれば後日一緒に・・・ということにしました。
結果的に、一人で行って胸の内を話せたことが良かったのでは、と思いました。
話のメインは患者自身が心の内を話すこと
体外受精を専門にしているというクリニックのカウンセラーさんは女性の方で、診察室とは違う階の応接間のようなところに通されました。
簡単なカウンセラーさんの自己紹介があり、その後、問診票に記入をしていきます。それを基に質問されるのですが、手始めにどうしてカウンセリングを受けようと思ったのかを聞かれました。。
しかし、どこから話していっていいのか自分でもよくわかりません。
とりあえず、何をどう伝えたら良いだろうと思いを巡らせながらまず私が言ったのが、
この一ヶ月間、ほとんどネコ動画ばっかり見てるんです。
という言葉・・・。
自分で言いながらも、なんだそりゃと心の中で思いつつ、泣き笑いしていたのでした。
カウンセラーさんも、まさか体外受精のカウンセリングで、ネコ動画ばかり見ているんですと悩みを打ち明けられるとは思ってもみなかったのでしょう。一瞬、「え??」というような表情に感じました。笑
そこから慌てて、そのネコ動画を見るに至る経緯を話し、ひととおり聞いたカウンセラーさんから質問をされました。
ネコ動画を見ないならどうなってた?
考えてもいなかった質問に、うまく答えが浮かびません。真っ白な頭に必死で答えを探し始めました。
たぶん・・・もっと何もできなかった、かもしれません。
自分でもよくわからないまま、とりあえず出た答えでした。
そう、きっと、ネコ動画を見ていなかったなら、何もしたくなくて寝込んでいたかもしれない、と頭に浮かんできました。
確かに動画は見すぎだけれど、やるべきことはやれていた。
保育園のこと、子供との会話。
心ここにあらずではあったけれど、子供に理不尽に当たり散らすということもなく、自分の感覚では淡々とではあったかもしれないけれど、子供のお世話もやってこれていました。笑顔がなかったわけでもありません。
あ、そっか。もしかしたら必要以上に罪悪感を持っていたのかもしれない、ということを、この質問の答えを探すことで少し客観視できたようでした。
カウンセラーさんからも、確かに視聴時間が長くて気にはなるかもしれないけれど、「今」は、それを観ることで心の安定を図っているのかもしれないですね、と言われました。
それなら、今は無理してネコ動画を見ることを止めないでいいんだ。心の傷が癒えれば、必要以上に見ることもなくなるんだろうな、というイメージが出てきて、何だかホッとしたのを覚えています。
そして、だんだんと自分でもよくわかっていなかった心の内を、自然と話せるようになっていました。
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やっとわかった自分の中の本音
夫にも同じ内容を話していたけれど、この体外受精専門のカウンセリングの場で話すことによって、心にブロックがかかっていたある感情がほどけていきました。
それを言葉で表すのは少し難しいのですが、心に浮かぶ言葉としては、
いつまでも満たされることのない願望。
努力しても、手に入れることができないもの。
という感じです。
こんなにも欲しいものを手に入れることができない。努力しても叶えることができない。
物理的に欲しいものが手に入らないとか、例えばお金がなくて買えない、とかそういう感覚ではないもの。
きっと、今までの人生でも、努力しても手に入れることができないという経験はしてきているはずです。しかし、子供を授かることに関しては、幼い頃からのイメージで、どうしても兄妹を産み残したいという想いがありました。おそらく、私自身に兄達がいて、自分の子供にも兄妹を作ってあげたいということと、兄妹の中で女一人だった私は、母と仲が良かったこともあり、自分も娘を持ちたいという願望が強いからだと思います。(もちろん、息子を授かることができたことは何にも代えがたい喜びで、その上に成り立つ願望でした。)
化学流産した子の出産予定日が体外受精胎嚢確認の日だった
カウンセラーに徐々に話をしていくうちに、急に悲しみと涙に襲われました。
それが、体外受精での胎嚢確認の日のこと、つまり、2度目の流産が確定した時の話でした。
胎嚢確認の日は、二人目不妊治療を開始して初めて妊娠反応が出た時の子の出産予定日でした。
体外受精が、あまりにも順調に進んだので、期待しすぎてはいけないと言い聞かせていたはずなのに、私はその日に胎嚢が確認できるものだと信じて疑いませんでした。
と心底思っていたのです。
しかし、実際は違っていました。エコー画面を食い入るように見ていても、いつまでも胎嚢が映し出されることはありませんでした。
この時のことを、私はカウンセラーに、こう伝えました。
そうカウンセラーに話し終えるまで、私は何度も嗚咽していました。
しかし、このエピソードは夫にも同じように語っていたのです。その時は涙が出ることもなく、淡々と自分のことを分析した結果を伝えている感じでした。
そこでやっと気づいたのは、夫にあまりくよくよした姿を見せたくない、と無意識に思っていたかもしれないということ。同じことを話していたのに、カウンセリングで話したことで、溢れる涙に自分でも驚きでした。
ましてや息子にも、赤ちゃんがきてくれないから悲しい、という姿は見せられないと、最初の流産の時に、自分の心に重しをのせていたのだと気づいたのでした。
だから、この日は夫のスケジュールの関係で私一人でカウンセリングを受けたけど、その方がかえって自分の本音を知ることに繋がったのかもしれません。
そして、夫にも同じことを伝えているけれど、何が違うのかな、と考えてみました。
夫は、私がホルモン剤の影響等で体調が悪い時や、生理がきて落ち込んでいるのも傍で寄り添って支えてくれ、もちろん二人の子供を授かることなので、彼も残念な気持ちに何度もなったことでしょう。しかし、体の不調や痛み、ほんの少しの期間の妊娠超初期症状を感じたりと、不妊治療を受けている女性ならではの感覚というのは、男性である夫に想像してと言っても、きっと無理な話です。
しかし、病院では治療している私の状態を把握しています。色々な患者さんを見てきた看護師さん達の対応や言葉は、夫とは違う感覚での優しさに溢れていました。
そういったところで、夫に話したことと同じことを病院のカウンセリングで話すというのは、「本当の私の気持ちをわかってもらえる」と感じたかもしれません。
体外受精カウンセリングを利用する理由は「やめ時」が多い
涙が出たことで、やっと悲しみを受け入れられたのかなと思えました。
そして、更にカウンセラーに思いを伝えていきました。
私たち夫婦は、本当はAIHのみでもっと早めに不妊治療を終えるつもりでいたこと。
しかし、4回目のAIHで化学流産になり、その経験からより一層もう一人授かりたい気持ちが私の中で強まったこと。
後悔しない為にも、可能性が高まるなら体外受精までチャレンジしてみたい気持ちが芽生えたこと。
最初で最後と決めていた体外受精が陽性判定後に流産となり、AIHにステップダウンして治療を続けているが、結果がどうあれ、そろそろ治療を終えることを夫婦で考えていること。
でも、私の気持ちが整理できていない為、なかなか決断を出せずにいること。
本当に治療を止める、と気持ちに踏ん切りがつけられるか考えると苦しくなってしまうこと。
カウンセラーに自分の考えていることを、言葉にして伝えていくと、ある程度、気持ちが落ち着いていくのを感じました。
そして、私以外にもカウンセリングを受けている方はいらっしゃると思いますが、どういった相談が多いのですか?という質問をしたように記憶しています。
カイカさんのように不妊治療の「やめ時」をどう迎えるか、どのようにして持っていくか、という心の準備に向けてカウンセリングを受ける、という理由が、ここのところ多いですね。
と話してくださいました。
そっか・・・私と同じように、不妊治療のやめ時について思い悩む方たちもたくさんいらっしゃるんだな、と思うと、胸がキュッとなりました。
そして、胸の内をカウンセリングを通して吐き出すことができて、やっと前に進めそうな気持になっていました。
カウンセリング内容をもう一度夫婦で話し合った
カウンセリングを終え、その日の夜に夫婦で話し合いました。
夫は静かに話を聞いてくれ、言葉を選びながらゆっくりと考えを話してくれました。
既に気持ちを切り替える準備ができている夫の話を、カウンセリングを受ける前の私なら受け入れられなかったと思いました。でもこの時は、100%ではないけれど、感情でも受け入れられるスペースが若干できていました。
幸運にも、私たちは息子を授かることができた。
息子を授かるまでの不妊治療は、高齢出産ということで、そもそも妊娠できないかもしれない、あとがない!!と、とにかく必死の時間でした。そういう意味では、二人目不妊治療はまだ心に余裕があったように思います。確かに高齢だけれども、一人授かっているのだから、あの時のようにガチガチになるよりは、リラックスして治療を受けようと思いました。
しかし現実は甘くなく、二人目を授かることなく妊活を終えようとしています。息子を授かった時の治療に比べて、期間もお金もかかり、痛みや苦しみもありました。自分では平静を保っていると思っていたけれど、治療期間が長くなるにつれて、心も消耗していました。
本当に命というものは神秘的で奇跡であるというのは、体外受精をする上で一つ一つの経過を見ることでも実感できました。
夫の言葉を受けて、この尊い奇跡を大切に育てていくのが自分たちの使命なのだということを、時間が経つほどにじわじわと心にきています。
そして私達夫婦は、2018年をもって不妊治療を終えると決断できました。
養子を迎えるという選択肢について
私達は息子を授かる前も、二人目不妊治療の前にも、養子として里子を迎えることも選択肢としてあると考えていました。
娘が欲しいと強く願う私でしたが、二人目不妊治療の前に夫が話していた本音は、もし女の子が生まれた場合、夫の持病が遺伝することが気になると言っていました。夫はファブリー病という難病指定の治療を受けていますが、子供が男児なら遺伝はしないが、女児の場合に100%遺伝します。
だから、もし授からなかったとしても、女の子を養子に迎えるというのが、私の希望も叶え、夫の心配も払拭できる選択ではあります。
この日は、そのことについても言及しました。
結論としては、養子は迎えないということになりました。
理由としてはいくつかあります。
経済的なこと。体力的なこと。この二つについては、子供が授かった場合も当てはまることではありますが、改めて考えた時に出てきた不安要素でした。
そして私が頭に浮かんだのは、お恥ずかしいですが、実子がいる今となると、里子を迎えた時にちゃんと平等に接することができるのか、という不安がよぎりました。分け隔てなく育てる!という信念を掲げたとしても、私は強い人間ではないので、自分の気持ちに余裕がなくなった時に本当にそれができるのか?という自分の問いかけに自信をもって頷くことができませんでした。それは自分自身でショックな答えでしたが、生半可な気持ちで命を迎えることはできないんだということを、二人目不妊治療の期間を通して導いた本音なのだと思います。
こう文章にかきながらも、それでもやっぱり娘が欲しかった・・・という想いがめぐる私がいます。その想いがあれば、どちらも分け隔てなく大事に育てられるのでは?という気持ちもまだまだあります。
しかし、今は夫婦で出した答えに迷いはありません。
まとめ:カウンセリングを終えてからの気持ち
その後、ネコ動画を依存的に見続けることは減っていき、今では私のお楽しみ時間、リフレッシュタイムになっています。
ネコ動画があったおかげで、心のバランスを保てたと思うので本当に感謝しています。
そして、いつでも傍で支えてくれた夫、愛しい息子の存在、病院のみなさんのおかげで、前に進む気持ちを取り戻しました。
今でも、二人目が欲しい、欲を言えば娘が欲しい、という気持ちはまだあります。しかし、カウンセリングを受けて、自分の心の整理をすることができたおかげで、二人目不妊治療に捧げていたエネルギーを、今度は違うものに注いでいくイメージができるようになりました。
立ち止まっていても、時間だけは過ぎていきます。その間に、愛しい家族との「今」の瞬間を集中できずに見逃すのはもったいないと思うようになりました。
私も「今この瞬間」を楽しんでいきたいです。
長い文章を読んでいただき、ありがとうございました。