大好きな祖母は、
いつも翡翠の指輪をしていた。
とりわけオシャレ
という訳ではなかったけど、
その指輪だけは
肌身離さずだったように
記憶している。
祖母にとって
その翡翠の指輪が
どういうものだったのか。
母に尋ねてみても、
「そういえば、聞いてないなぁ。」
という返事。
まぁ、大抵、この回答だ。
どうやら若い頃の母は、
祖母にあまり関心がなかったようだ。
おばあちゃんっ子の私としては、残念。
その翡翠の指輪は、
形見として母が持っていた。
最初は、母の妹である
叔母の元にあったらしいが、
のちに母へ渡したという。
しかし、
母は指に何かをはめる感じが
好きではなく、
翡翠の指輪は
居場所を失っていた。
だったら、私がもらいたいな。
そんな風に思っていたけど、
なかなか言い出せずにいた。
今年亡くなった
叔母の葬儀を終えたあと、
思い出話から、
祖母の指輪の話になった。
私も母に似て、
指のオシャレを
楽しむことはなかったが、
去年、夫の祖母の形見である
指輪ををいただいてから、
身につける習慣がついた。
タイミングは今かもしれない。
そう思い、母に聞いてみた。
「ねぇ、お母さん。
おばあちゃんの翡翠の指輪、
しまい込んでいるなら、
私がもらっていいかな?」
がめついと思われたら嫌だな、
と考えてしまって
言い出せなかったけど、
母の答えはあっさりと
「いいよ。」
だった。
こうして、祖母の翡翠の指輪は
私の元に来た。
自分に自信がない私は、
指輪の素敵なつけ方なんて
知るはずもなく
今まで敬遠していたけれど、
これは特別。
祖母を感じられる指輪だ。
すべての指にはめてみたけど、
ちょうどよく納まるのは、
左手の人差し指。
少し歪んでいるし、
デザインも古臭い感じだけど、
堂々とはめてみると
いいもんだ。
私が小学校4年生の時に
他界したので、
祖母の声も
想い出せないような
覚えているような、
それくらいの月日が経った。
でも、この翡翠の指輪をはめて
そっと手を添えながら目を瞑ると、
白い光が差し込んでくるような
感覚になる。
それは、
懐かしい祖母の温もりに似ている。
会いたいと思った時、
すぐに祖母を感じられる
翡翠の指輪。
私の元に来てくれて、
ありがとう。