かわいい生徒からの贈り物は、四葉のクローバー。

結婚後、しばらく同じ職場で働いていたが、

一人のフレネミー女子との関係で

メンタルをボロボロにされていた。

その当時、

フレネミーという言葉を知らなかったが、

造語で、フレンド(友)と

エネミー(敵)をあわせたもの。

友を装った敵

という意味だ。


毎日、悲壮感漂わせていた私に、

とうとう夫から退職を勧められた。


しかし、それなりにキャリアを積み、

昇給も叶い、

何より、信頼関係を築いた

多くの戦友である

同僚たちとの場所を去ることに

躊躇していた。


晩婚だった私たち夫婦。

妊娠を希望するなら

あまり猶予は残されていない。

私が焦っていることを

夫も知っていた。

退職を決意したのは、

夫からの言葉だった。


「こんなにストレスに晒されていたら、

授かるものも授かれないよ。

収入が減るのは不安だけれど、

言ってしまえば、

たかがこの収入のために

大事な体を壊すなんて

意味ないよ。」


確かに年齢からすれば

高い給料と言えないだろうが、

私にとっては今までの中で

最高額の月収だった。

実際、収入が無くなれば、

生活レベルも落とさなければいけない。


「たかがこの収入のために」

と言ってしまうのは、

夫としても勇気がいっただろう。


それでも、ありがたかった。

それくらい、心が疲弊していた。


私が退職してしばらくすると、

ぽつり、ぽつりと退職者が増えたと聞いた。


月日が経ったある日、

その中の元同僚から連絡があった。


「妹の経営する塾で

英語を教えてもらえないかな。」


教えるのは苦手意識があったけれど、

声をかけてもらえたのが嬉しく、

引き受けることにした。


英語の先生といっても、

ほとんどがプリントに丸をつける作業。

大変なことといえば、

親に無理やり入らされた

やる気のない子たちに

やる気スイッチを押してあげること。

それがどれだけ難しいことか

痛感した。


それでも多くの生徒は、

わいわいとしながらも、

課題をクリアしていく。

子供たちの活気はすごい。


数ヶ月経って、ある生徒から

ステキなプレゼントをもらった。


四葉のクローバー。


まだ幼児の女の子。


「あのね、お母さんと公園に行ってね、

四葉のクローバーたくさんあるから、

せんせーにあげる!」


キラキラした目で

大事そうに挟んでいたノートから

取り出してくれた。


なんてピュアなんだろう。


あのフレネミーがいた職場環境では

決して味わうことのできない

感動と癒しだった。


その子は、他の先生方にも

気前よくプレゼントしていた。


それにしても、四葉って

そんなに見つかるものなの?


それまで、

実際に地面に生えている

四葉のクローバーを

見たことがなかった私。

このことをきっかけに、

公園に行くときは

私もクローバーを

探すようになった。


でも、ぜんぜん見つからない。

そしてふと疑問に思った。

私が見ている植物は、

本当にクローバーなのだろうか?

インターネットで調べると、

見事に間違っていた。


私がずっとクローバーと思っていたのは、

ムラサキカタバミの葉。

そして、以前にもエッセイで書いたが、

ムラサキカタバミの花のことを

スミレだと思っていた。


クローバーは、シロツメクサのこと。

それまで、それぞれ違う植物だと思っていた。


公園で探し始めた時は、

確かにシロツメクサの葉を見ていた。

しかし思い込みはすごいもので、

いつの間にか脳内で、

カタバミの葉に変換されていた。

間違いに気づけたのは、

かわいい生徒のおかげ。

一つ幸せ知識を得ることができた。


それ以来、

シロツメクサがうっそうと

伸び放題なのを見かけても、

この中に四葉のクローバーが

隠れているんじゃないかと

ワクワクするようになった。


英語の先生は、

期間限定で受けた仕事。


「もしよかったら、続けてもらいたい。」


と、ありがたい言葉をいただいたが、

満期終了で終わることにした。


今でも公園で、

シロツメクサの群生を見ると

心が踊る。

そして、四葉のクローバーを見つけられた時の

幸福感は格別だ。


普通なら見過ごすような日常に、

キラキラ光る幸せを

見つけられる子供たちはすごい。


四葉のクローバーを見るたびに

あのかわいい生徒を想い出す。


すぐ近くにある

幸せの見つけ方を

私に教えてくれて

ありがとう。


追伸:

カタバミの葉も

ハートの形でかわいい。

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